ご挨拶 Road Runner リリース

あら、井上大地の長文地獄を開いちゃいましたね。よーし、せっかくなので読んでいってくださいな。

まずはじめに、こうして新たなフルアルバムを皆様の元にお届けできる喜びをお伝えしたいのと、制作のきっかけとなった古くからの友人と音楽仲間の励ましに感謝申し上げたいです。やっとこさ完成したぜ、ありがとう!!

さて、今回のソロアルバム第六弾、久々のオリジナルソング”歌もの”フルアルバム全10曲入りでございます。気楽に聞いてもらえるのが一番ですが、本作をもっと深く知りたいという方のために、本記事では制作エピソード、裏話、ちょっとマニアックな音楽とか楽器の話、余談ですが井上の暑苦しい気持ちとか、そんな話を綴ってまいります。

うっすら歌詞とか楽曲のネタバレもわずかに含まれているので「そういうの、あたい…嫌いヨ。」という方はまずアルバムをお聞きなすって、どうしても時間が余ってしょうがない時にでも読んで頂けたらと思います。長いしね。

🌵 絶望のスランプ期

まず何から書けばいいかな。アルバム内に仕掛けたナゾの数々、サウンドの作りで工夫したところ、あんなことこんなこといっぱいあるけど、はじめは本作を制作するきっかけとなったエピソードから書いていくことにします。

前作Cream as Blue(ソロ5作目、インストアルバム)より実に丸1年、世の中は変わらずCovid-19の影響にさらされていました。音楽活動も大幅に制限され、暗澹たる日々を払拭すべく新作のレコーディングに着手するも

なぜか歌詞が書けない。来る日も来る日も、歌詞が書けない。

その頃、心の支えになっていたのは2020年から続けてきたYoutube配信”真夜中ギター”や少しずつ戻ってきたライブ演奏の日々。オンラインレッスンを続けてくれている生徒さん達との交流に、レコーディングのクライアントとのやり。多くは望めませんが、この内外ともワイ状況下において、人とのつながりは貴重な機会となり、乾ききってしまっていた作詞への意欲に少しずつ水と栄養を与えてくれました。

🌵 あなたとキャッチボール

また歌を書こうと決断した最大のきっかけは、私の音楽にかわらず耳を傾けてくれている古い友人達と、根強く応援してくださるお客様。わたしが投げかけたボールを投げ返してくれる人たちの存在でした。

わたしにとっての作詞という生業がメロディに張り付いてる”記号のような言葉”を無意識に拒絶していたのです。歌詞を書けなくなってしまっていた原因が自分の中にあることを実感し、この考えのもと今までの自分の歌詞の書き方、伝え方を根本から見直し、作詞方法をすべて一からやり直すことにしました。

🌵 10曲それぞれに込めたナゾ

ここからはアルバムの内容に踏み込んで行きます。本作はかつての過去作に類を見ないほど、歌詞に癖を持たせました。本来の意図を隠した物語的な歌もあれば、一見なんの意味も為さないような言葉が並んでいる曲、登場人物の関係性が補完されていない曲、といろいろです。時にはいつもより音量を上げて、じっくり聴き込んでみるとそれぞれの楽曲の中に楽しい発見があるかもしれません。

例えばタイトル曲にもなっている”ロードランナー”で歌われている「青い山」という言葉。

2曲目の”1982-2022”のアレンジ、物語内の時間軸の変化。缶からの中身。

3曲目”螺旋”に隠されたとある看過できない出来事への批判、など。

ここに挙げた例はほんの一例です。繰り返しますが、気軽に聞いてもらえるのが一番です。しかし、本作の世界観にどっぷりとハマりたい人向けに、サウンド、アレンジ、歌詞の中にたくさん仕掛けを作ってみました。それを少しずつひも解いてみてはいかがでしょうか。

🌵 楽器演奏とレコーディング

サウンドの土台を作るにあたって注意したことはひとつ。本作は過去作品及びかつてのリーダーバンド含めた、井上大地のすべてのサウンドづくりの集大成とも言える内容を目指しました。

古い順からHiT ThaT Jive!, うばたま, Izakaya Band, 孤独のヒュード、すべてのリーダー作品の要素。

アメリカでのレコーディング、海外トップミュージシャンとの共作の経験。

ギター、バンジョー、スティールギター、マンドリン、ウクレレ、ベースの昔からのメイン楽器群。

鍵盤、ドラム、パーカッション、ストリングアレンジとここ数年取り組んできたサブ楽器への取り組み。

どうにも好きになり切れない自分の声、ソングライティング。

本作において、歌詞における新しい試みとは対照的に、サウンド、メロディ、リズムについては奇をてらわない、言いかえれば昔っからの井上大地的なサウンドで溢れています。例によって井上大地ソロ作品は、演奏からアレンジ、歌唱から録音まですべて一人で行っています。しかしそこには、わたしと共演を繰り返してくれたたくさんの音楽仲間たちとの、得難い刺激的な音楽体験が見え隠れしています。あ、そうそう。本作のサウンドの中にもし、

聞こえないはずの音が聞こえた気がしたならば、それは心霊現象ではありません。

アルバムを聞いているあなたも参加できるよう、音像にあなた一人分のスキマを確保してあるのです、、、信じるか信じないかは、あなた次第!!

🌵 カタチにするとは?

本作の制作発表後、圧倒的に多かったのが「作品をカタチのあるものとして残してほしい」という意見でした。わたしは古い人間ですので、なんでも1982年製のギターがジャパンヴィンテージとか言われちゃうご時世ですから、音楽はレコードやカセットテープ、CD、MDで聞いていた世代なのでもちろんその気持ちはよくわかります。

そんな時に心に沸いてくる葛藤は、今の時代CDなどのカタチある音楽媒体が聞かれなくなってしまったこと。そんな音楽業界の古い様式が抱える問題を、我が仕事部屋の押し入れに積まれたままの段ボール箱に、遠い目を遣りつつ痛感するばかりです。

ええーい!とがむしゃらにCDだのTシャツだのを作り上げてしまう前に、一度立ち止まって自分の、そして皆さんの”カタチにしてほしい”という感情の行き先を観察、研究してみようと思いました。

🌵 わたしの手から、あなたの手へ

わたしにとって、昔はレンタルレコードやCD、今ではサブスクによるストリーミング再生に対して引っ掛かっていたもの。借りたアルバムに限って、なんだか愛着がわかない、、、そんな経験ありませんか?

同じアルバムなのに自分で買い直してみたら、途端に愛着が生まれてくる。

そう、これだったんです。そして私は一つの結論に達しました、じゃじゃん。大衆音楽のあるべき姿の一つとして、僕が大切にしたかったのは

「作り手から聞き手へ作品を手渡す」

ということだったんです。作り手、聞き手、手渡す、、、言葉っていうのはうまいことできていますね。

最近ではすぐにスマホやPCに取り込んでしまうけど、一度カタチとなったモノを所有するというのは、いわば”通過儀礼”の的なことに過ぎないんですが、作品に愛着を持つには実は大切なことなんじゃないかなと思った次第です。

でもCDは広く手に取ってもらえる機会が減っているし、レコード(←ほんとは作りたい)とカセットは数少ない愛好者向け媒体というのもご存じの通り。

よし、それならば!いっそのこと音楽媒体にとらわれず”音楽アルバムと対となりうるカタチある作品”を用意するのはどうか、という考えが頭をよぎります。

🌵 音楽と、手、、、手ぬぐい??

ただのCDの代替品ではない、アルバム作品の一部としていつまでも手元に置いといてもらえるもの。ポストカード、絵画、掛け軸、タペストリー…いろんなアイディアが溢れてはすごい勢いで没っていきます。そこでふと原点に返り、井上大地の音楽活動のテーマ「音楽と生活」にのっとったもの、さらに今回は日本語歌詞のオリジナルアルバム。この二つの要素に絞ってアイデアを出しているときに思いついたのが

デジタルアルバムと手ぬぐい

ほら、手って漢字も入ってるし。イラストとデザインでアルバムの雰囲気も伝えられるし、何よりもCD以上に普段使いしてもらえるじゃない。あーーー、もうこれしかない!ということですぐさま、絶大な信頼を置いているプロのデザイナーさんと、イラストレーターさんにお声がけして、井上の意見をふんだんに盛り込んだ”あらたなカタチ”を制作するプロジェクトが始動しました。

レコーディングも最終段階を迎えた頃の話で、モノづくりの終わりが見えてきて少し寂しくなってきたところにこのアイディア。単なるダウンロード音楽と物販という考え方ではなく、ふたつをひと組の作品と考えて楽しんでもらえるものを聞き手にカタチとして届けたい。これがアルバム制作の一番最後にやってきた熱い重要な仕事でした。

🌵 今後の展開

従来のアルバムリリースの在り方として、プロモーションをしたり、レコ発ライブやツアーをやったりというのが一般的でした。今回はそのどれも予定しておりません。音楽家にとって苦しい状況の昨今、プロモーションに予算がかけれないという現実的な問題が正直なところです。しかしここは腐ることなく、まずわたし自身が自分の足と手、そして暑苦しい気持ちを込めてコツコツとこの作品を広げていこうと思っています。リリースするからには多くの方に聞いてもらいたいですし、世界中の井上の音楽に刺さってくれる人の手元に届くようにがんばって参ります。

🌵 井上長文地獄、いよいよ締めくくり

皆様には私からアルバムを通して、ただ広がっていく歌と音の世界を用意しました。その世界を気軽に散歩するもよし、いろんなところに仕掛けてあるナゾを解いて回るもよし、ひとりでもよし、誰かとでもよし。日々の暮らしの中で好きな時に扉を開けて出かけられる、現実から少しばかり離れた音楽による異世界小旅行。

まずはその世界に触れて、可能な限り遊びつくしてみてください。

そしてアルバムを聞き終えて現実世界に戻ってきたとき、皆さんもひとりの道を行く者<Road Runner>として、何か大切なこと対して思いを馳せるきっかけにでもなってくれたら、作り手としてこれ以上嬉しいことはありません。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

2022.08.吉日 井上大地

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